鼠径部(そけいぶ)ヘルニアとは?
鼠径部ヘルニアとは、足の付け根(鼠径部)の腹壁の弱い部分から、お腹の中の腸や脂肪が皮膚の下に出てくる病気です。一般的には「脱腸」とも呼ばれています。
立ったときやお腹に力を入れたときに足の付け根がふくらみ、横になるとふくらみが小さくなったり、元に戻ったりするのが特徴です。
鼠径部ヘルニアの種類
鼠径部ヘルニアは、出てくる場所によって主に3つのタイプに分けられます。
・外鼠径(がいそけい)ヘルニア:最も多くみられるタイプ
・内鼠径(ないそけい)ヘルニア
・大腿(だいたい)ヘルニア:比較的女性に多くみられるタイプ
いずれも足の付け根のふくらみや違和感などが主な症状です。
鼠径部ヘルニアになりやすい人
鼠径部ヘルニアは特に中高年の男性に多い病気です。
また、次のような方では発症しやすいとされています。
・立ち仕事や重い物を持つことが多い方
・お腹に力を入れる機会が多い方
・便秘などで強くいきむことが多い方
・慢性的な咳がある方
・喫煙される方
女性では、大腿ヘルニアにも注意が必要です。
主な症状
代表的な症状は、
・足の付け根がふくらむ
・立ったときや力を入れたときに「ポコッ」と出る
・足の付け根に痛みや違和感がある
などです。
初期には痛みがなく、ふくらみだけがみられることもあります。横になるとふくらみが小さくなったり、元に戻ったりすることも特徴のひとつです。
治療について
成人の鼠径部ヘルニアは自然に治ることはなく、根本的な治療は手術です。
症状の程度やヘルニアの大きさ、年齢、全身状態などを考慮し、患者さんと相談しながら治療方針を決定します。
多くの場合すぐに緊急性がある病気ではありませんが、腸がはまり込んで戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を起こすことがあるため注意が必要です。
嵌頓(かんとん)とは?
嵌頓とは、飛び出した腸などがヘルニアにはまり込み、お腹の中に戻らなくなった状態です。
・突然強い痛みが出る
・ふくらみが硬くなり、戻らなくなる
・吐き気や嘔吐がみられる
といった症状が現れることがあります。
腸の血流が悪くなると腸管が壊死する可能性があり、緊急手術が必要となる場合があります。
このような症状がある場合には、すぐに医療機関を受診してください。
手術について
鼠径部ヘルニアの手術には、大きく分けて2つの方法があります。
① 腹腔鏡手術
お腹に小さな孔をあけ、カメラでお腹の中を確認しながらヘルニアを修復する方法です。
傷が小さく、術後の痛みの軽減や早期の社会復帰が期待できます。
当院では、腹腔鏡手術を中心に行っています。
② 鼠径部切開法
足の付け根を切開し、直接ヘルニアを修復する方法です。
過去に受けた手術の内容やヘルニアの状態、年齢、全身状態などによっては、鼠径部切開法が適している場合があります。
いずれの方法でも、成人では主に「メッシュ」と呼ばれる人工の網を用いて弱くなった部分を補強します。
当院では患者さん一人ひとりの状態に応じて、適切な手術方法を選択しています。
通常は1泊2日程度の入院で治療を行っています。退院後は日常生活を比較的早く再開できますが、しばらくの間は重い物を持つことや激しい運動を控えていただきます。
手術の合併症について
安全に手術を行うよう十分に注意していますが、手術後にはまれに次のような合併症が起こることがあります。
・傷の感染
・血液がたまる「血腫」
・浸出液がたまる「漿液腫」
・術後に長く続く痛み
・ヘルニアの再発
手術前に治療方法や合併症について十分にご説明したうえで、治療を行います。
まとめ
鼠径部ヘルニアは、適切な手術によって治療できる病気です。
「立つと足の付け根がふくらむ」
「足の付け根に違和感や痛みがある」
「以前よりふくらみが大きくなってきた」
などの症状がある場合には、お気軽にご相談ください。
